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多様化する「かき氷」の楽しみ方


かき氷と聞くと、縁日の定番で屋台の先に透明な箱に入ったシロップが並んでいる光景をイメージするか、あるいは夏の暑い日にご家庭のかき氷機で夏休みに作ったような、子供の頃の、夏休みの思い出のようなものが脳裏に浮かぶ方が多いのではないでしょうか?

紙コップに入り、派手な原色のシロップがかかった、先端が広がったストローで食べる、荒くガリガリとした冷たい夏の思い出(そして舌に付いた色を見せ合う…)というかき氷のイメージは、なんと一昔前のものとなっているようです。

かき氷は、かつては氷室に保存された天然の氷しか利用できなったこともあり、高貴な身分の方しか食べられない高級品でしたが(古くは枕草子など、平安貴族たちの随筆に登場します)、時代が近代に移り、機械製氷も登場した明治20年頃には極めて一般的な涼となっていました。

東京、横浜では、夏季に氷屋が「5歩に1店、10歩に1舗」と言われるほど増えていましたが、一方で粗悪な氷の販売を取り締まるために当時の内務省が、衛生的に認められた許可証としての、のぼりや看板の掲示を義務付け、この認可の旗が現在の氷旗のデザインの元になっているそうです。

・超純氷®を使ったかき氷cafe&bar、フラッペハウス店頭にて掲げられた氷旗。

そしてSNSの普及により、見た目の映える飲食物の価値が高まりを見せる時代になると、かき氷は多様性を増していき、従来のイメージとは大きくことなる、かき氷も登場してきました。

今は自宅で作ったり、縁日などのイベントで食べるだけでなく、かき氷目的で飲食店に行く人も増え、あくまで夏の涼であった、かき氷もすっかりクレープやケーキのようなスイーツとしてのポジションを確立したと言えるでしょう。

・かき氷のイメージは近年変化しつつある。

※「名店のかき氷 どんな氷を使ってる?」東京アイスアカデミーより抜粋

かき氷には「半貫目」の氷を!


「名店のかき氷 どんな氷を使ってる?」動画提供:東京アイスアカデミー

かき氷に使われる氷には様々なものがあり、多くの店舗がこだわりを持って原料氷を選んでいますが、なんといってもフワフワの専門店特有のかき氷の食感に欠かせないのが「貫目氷」です。

貫目とは、 中国を起源に東アジアで広く使用されている「尺貫法」と呼ばれる単位系に基づく単位で、一貫とは当時の貨幣(寛永通宝など…当時の貨幣に穴が開いているのは、ここに紐を貫き束ねたためで、その一まとめを「一貫」とした)の最小単位のもの1000枚分の重さに由来します。

一貫=約3.75㎏であり、半貫目では1.8㎏となります。

尺貫法はほとんど現代では見なくなりましたが、今でも氷の重さには貫目の単位が使われており、また寿司を一つ一貫と呼ぶルーツとして、寿司に1貫ほどの氷の重さをかけるように、しっかりと握るように指導されることから来たのではという説があります。

・ 貫目氷は家庭のキューブ氷と違う、プロのかき氷の食感の実現に欠かせない。

※「名店のかき氷 どんな氷を使ってる?」東京アイスアカデミーより抜粋

かき氷機は刃を氷に対してかける角度もさることながら、充分なサイズが確保できていることも重要であり、そもそもある程度の大きさの氷からでなければ大きな切片を削り出すことも難しくなります。

そのため貫目氷はフワフワのかき氷に欠かせないのですが、貫目氷にはいくつか適切な扱い方のポイントがあります。

まず、冷凍庫から出したばかりの貫目氷は表面が霜で白くなっている場合がありますが、この時の貫目氷は表層が非常に硬く、粗くなっていますので、削っても大きな切片が得られない どころか、かき氷機の刃を痛める原因にもなりますので、しばらく室温で慣らし、表面が軽く融け、氷が緩んだ状態になってから削り始めるのが肝心です。

目安としては、表面の霜が充分に融け、反対側まで氷が透けて見通せるくらいになったら使い頃です。

・ 透明な氷は、添加物など誤魔化しがきかない。

※「名店のかき氷 どんな氷を使ってる?」東京アイスアカデミーより抜粋

また、貫目氷はもともと角氷(かくひょう-アイス缶製法による100キロ以上ある巨大な氷)から加工して作られているため、自動製氷機によるものより長時間かけて、硬く高純度で作られる不純物や泡を含まない純氷な氷です。貫目氷は、シロップやトッピングの味を損なわない、極めてかき氷の素材として良質であると言えます。

また、貫目氷をセットできる家庭用のかき氷はまだまだ少ないため、貫目氷はまさにかき氷のプロの証ともいえ、半貫目で おおよそかき氷を10杯ほど作れるなどコスパ面においても優れています。

かき氷の美味しさの秘訣は「結晶構造」!


綿あめのようにフワフワで口の中で融ける食感が人気の「台湾かき氷」系、キューブ氷から作られたジャリッとした食感が昔ながらの「オールドファッション」系、さらにはかき氷にメレンゲやカスタードソースなどを載せて炙った「焼き氷」系まで、ラーメンブームのときのように様々な「派生系」が生まれています。

アイスクリームにも負けないほどの、かき氷の多様性が生まれている背景の一つとして、東京工業大学などの研究により、氷はその結氷過程の違いにより「結晶構造」に差が生まれ、それが様々なかき氷の食感のバリエーションに繋がっていると考えられています。

天然氷と人工氷では切断したときの氷の切片の様子がかなり異なり、天然氷は非常に切断が難しく、きれいな切片にならない傾向があるものの、ある特定の方向に対して力をかけると、きれいなシート状の切片ができる傾向にあります(いわゆる台湾系かき氷などに多く見られる切片です)。

一方で人工氷は切断方向により多少の違いはみられるものの、天然氷ほどはっきりした傾向は無くどの方向からでも容易に切断可能です。

また、密ではっきりとした切片が取り出せる傾向にあります。

・人工氷でも単結晶の大きいものからはフワフワの切片を削りだせる。

※「名店のかき氷 どんな氷を使ってる?」東京アイスアカデミーより抜粋

これは、天然氷は人工氷よりも方向性に規則性を持った単結晶に近い構造をしており、非常に硬く綺麗な切片に切断するのが難しいものの、単結晶の継ぎ目に沿って刃を入れれば非常に、容易に切断できるということです。

対して人工氷は空気の全く入っていない純氷であり、単結晶の継ぎ目を確認することが難しいことに加え、様々な方向から単結晶が成長していく人工氷は、位置により単結晶の継ぎ目が異なっていると考えられます。また、切片が密ではっきりしているのは、空気が入っていない為であると考えられます。

このように 天然氷と人工氷、またはご家庭で作れるキューブ氷まで、氷には作り方により様々な個性があり、それが多様なかき氷の食感と美味しさに繋がっているのです。

参考及び出典:東京アイスアカデミー…tokyo-ice-academy.com

東京工業大学、東京海洋大学、ぐるなび総研の共同研究-かき氷の多様性を生むのは氷の結晶構造と切削技術/株式会社ぐるなび総研/2015.7.17/…

http://gri.gnavi.co.jp/insight/2015/pdf/20150717.pdf