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【余談】夏休みの自由研究、終わってますか?


さて、8月もいよいよ3分の1を切りつつあります。

夏休みの宿題、特に自由研究を終わらせなければならないことに、頭を抱えているお子様、親御様も多いのではないでしょうか?

ここでは、そんな皆様にお役立ちそうな実験を一つお伝えします。


「自由研究」とはいうものの、哲学者サルトルの「人間は自由の刑に処されている」という言葉のように、一つの正解に縛られていない「自由」というのはある意味、不自由より人を苦しめることがあります。


ましてや、「自由研究」は「自由」などとは言っているもの、やはり学校の課題なので、自由という言葉を信じて、あまり自由すぎる研究をした結果低い評価をつけられるというのも中々癪に障りますよね?(筆者は経験あります…)


だからといって、あまりにもテンプレにハマった、新しい発見が生まれる余地のない自由研究は、まさしく「面倒臭い課題」でしかなくなってしまい、貴重な夏休みの時間をそんなことに使うのは勿体ないですよね。


そこでひとつ、氷に関する未解明な部分を含んだ、かつご家庭でも検証可能な面白い現象、「ムペンバ現象」をご紹介しましょう。

ぬるま湯より熱湯のほうが早く凍る?


1963年…今のタンザニアで、ある少年の発見が後に世界を驚かせました。


当時13歳だったエラスト・ムペンバが学校の授業でアイスクリームを作っていた際、他の生徒が砂糖やミルクなどの原料を冷やしてからアイスクリームの攪拌機に入れていたのに対し、彼は誤って熱いままのアイスクリーム原料を攪拌器に入れてしまいました。


しかし、なんとムペンバのアイスクリームは他の生徒のものより早く凍ったのです。

改めて、この現象を検証するために、沸騰したお湯と、温かい程度のお湯をどちらが先に凍結するか試したところ、沸騰したお湯の方が早く凍ることを確認したといいます。


この発見は東アフリカ大学の科学部長、デニス・オズボーン氏によって注目され、最初は半信半疑であったオズボーン氏も、これを検証した結果、ムペンバとともにこの研究結果を1969年、正式に発表しました。


実はまだまだ謎が多い「ムペンバ現象」

しかしこのムペンバ現象、実は疑惑のある発見と見なされてきました。

なぜならこの現象、条件が非常に限られているのか、実験で同様の結果を再現できないことが多かったからです。


これがNHKの番組、「ためしてガッテン」にて取り上げられたところ、ある物理学者からは「熱力学の基本法則からありえない」という批判を受けたこともあるそうですが、同時にそのような効果が条件によっては発生し得る可能性を示唆する研究者もおり、専門家の中でも意見が割れている事象です。

「ムペンバ効果」ではなく「ムペンバ現象」が適切か?

このことから、ムペンバ現象は一般的に「ムペンバ効果」と呼ばれてるものの、雪氷学を研究する学術団体の「日本雪氷学会」では、

「ある物理過程が原因となって結果 (効果) が出現する」場合に使われるべきである「○○効果」という名称は適切ではない。

としてムペンバ現象(湯と水凍結逆転現象)と称されることが適切だとしています。


近年では、この現象の一部については確実なものとされてきています。


カナダ・ブリティッシュコロンビアに本拠を置く大学にて行われた実験で、ごく小さなガラスビーズを水とともにグラスに入れ、水中でガラスが冷却されるまでの温度変化をレーザーで観測していたところ、初期温度が高温のガラスは、低温のガラスよりも早く冷却されることがわかりました。


また約1000回の実験で、高温のガラスは低温のガラスより約10倍早く冷却されることが明らかになっています。


しかし、あくまでこれは極めて環境が極めて管理されたラボでのこと、このムペンバ現象が一般的に観測される現象であるかとは別の話です。


さて、小野田商店でも日々製氷を行う中で、現場からは「夏のほうが(泡などが少なく、透明度の高い)良い氷ができやすい」という声がみられます。


しかし、小野田の超純氷®はあえて時間をかけて氷の単結晶を大きく成長させることで、透明度の高さを実現しています。

従って、夏の方が早く結氷するから品質が良い、ということもなく、また実際には夏の方が結氷に時間が掛かりがちで、夏のほうが良い氷ができやすい理由は正直よくわからないです。


氷というものは、身近なものながらまだまだ多くの未知を秘めていると言えそうです。

小自由研究で「ムぺンバ現象」再現にチャレンジしてみる?


さて、このようにまだ多くの謎を秘めているムペンバ現象ですが、この実験自体は極めて簡単、ただ温度の違う水を用意し、それぞれ同じ条件のもとで凍らせて比較して記録を取ればよいだけなのです。

簡単な上に未解明で、一人でも多くの人がいろんな環境で試してみることが有意義なこの実験、まさに自由研究にぴったりです。

実験の一例

.イギリスの科学雑誌「ニュー・サイエンティスト」ではこの現象を確認したい場合、もっともムペンバ現象が見られやすい条件として、摂氏35度の水と摂氏5度の水で行うことを推奨しています。


この他にも、水を入れるのにどんな材質の容器を使うか、または口の狭い細長い容器を使うか、口の広いボウルのような容器を使うか、など条件を変えることで結果は変わってくるかもしれません。

※実験する場合、陶器やガラス容器などの割れ物を使うのは危ないので、

やめましょう。


皆さんも、この夏の終わりに手軽な実験で未知の現象に挑んでみませんか?

(小野田商店は夏の売り上げが勝負なので、皆様に託します…)

出典

:田崎 晴明、田崎 真理子高度な科学が小学生にもわかる リカ先生の10分サイエンス(10)お湯が水より先に凍る!?「ムペンバ効果」をめぐって リカタン 理科の探検 2 10月号.2008-10.p.38~41.

J-CASTニュース.「水よりお湯早く凍る」論争沸騰 日本雪氷学会で本格議論へ